ここまで来てしまったTPP:植草一秀氏の正鵠を得た現状分析と反対運動の緊急提言


はじめに
植草一秀の『知られざる真実』の3月25日分のブログ記事を丸ごと転載させていただく。引用にちょっとルール違反を犯しているが、その記事内容の重要性をかんがみて、ご容赦願いたい。

植草氏の冷静で礼節をわきまえた、しかし、へこたれない言説には敬意をもって常に聞いていました。ちょっと気になる点があるとすれば、主張があまりにも正論過ぎたということでした。つまり、敵は攻撃しても「身内」は誰も傷つけない、共に戦おうという態度、でした。

しかし今日の記事はちょっと違います。インテリによる「前衛」組織を主張されている。実際の政治運動はこれが必要です。緊急の課題であればある程、また、マスコミの情報操作が巧妙であればある程、「前衛の指導」が必要になる。これは必要悪であり、かつて「レーニン主義」とよばれたものだ。

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2013年3月25日 (月)
安倍晋三首相原発・TPP・辺野古拙速処理の真相

7月参院選の意味を再確認しておきたい。

何よりも重要な点は、7月参院選で安倍政権支持・補完勢力が参院過半数、絶対多数を確保すると、2016年までの3年間に、日本の諸制度、国のかたちが、書き換えられてしまう可能性があることだ。

昨年12月16日の総選挙は違憲選挙である。

違憲選挙だから、当然、無効選挙にならねばならない。

裁判所は選挙の無効を宣言するべきである。

しかし、この国の司法は、政治権力から独立していない。

司法は、行政権の支配下に置かれているのが実態である。

行政権の支配下に置かれている司法が、総選挙を無効とする判断を示すことはないだろう。

つまり、現在の安倍政権が衆院を解散しない限り、2016年夏まで、国政選挙が行われない、「空白の3年」が生まれることになる。

政治勢力は多党乱立のように見えるが、これは一種の「偽装」、=「目くらまし」の策謀であると思われる。

同種同根の政治勢力が多党に分立して、それぞれが一定の投票を獲得し、議席を占有する。

国民の多様な意見を吸収しているように見せかけて、実は、これらの勢力が同種同根だとすると、特定の政治勢力が国会を支配することになる。

結論を先走って述べれば、自公+みんな維新は広い意味で同種同根である。

民主の大半も同種同根である。

この自公+みんな維新+同根民主によって国会が占領されてしまえば、大政翼賛政治になる。

参院選の結果、この大政翼賛体制が構築される可能性が高まる。

「同種同根」の根本は、「対米隷属」である。

当面の具体的なテーマは、辺野古原発・TPPだが、この三大問題について、対米隷属を軸にものごとが決着してしまう可能性が生まれている。

安倍晋三氏は、すでにこの三大テーマである、辺野古原発・TPPについて、地雷を埋め込んだ。

重要なことは、その地雷が火を噴くタイミングが、すべて、参院選後に設定されたことだ。

安倍氏が三つのテーマについて、前のめりの姿勢を示した理由は、地雷の埋め込み作業を、できるだけ参院選と引き離すためであったと思われる。

早い段階で地雷を埋め込んでしまい、参院選のころには、この地雷についての認識を薄れさせるのだ。

この三大問題を参院選の焦点から外し、参院選を乗り越える。

地雷が火を噴くのは参院選が終わってしまったあとだから、地雷が火を噴いて主権者が後悔しても、もう手遅れである。

批判が強まっても、国政選挙がないから、主権者が意思を表示する機会は存在しない。

2016年までその怒りを持ち続けるほど、主権者の意思は強固でない。

主権者はそのように見くびられている。
政権のシナリオに全面協力しているのがマスメディアである。

TPPも政権が創作したイメージストーリーが流布されて、主権者を丸め込むことに成功しつつあるかのように見える。

「TPPを正確に説明すると世論はTPP反対に変わる」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-4d4a.html

主権者は真実を知らされず、政府が創作した虚偽のイメージによって誘導されてしまっている。

こうした、イメージによる誘導こそ、「情報操作」そのものである。

政治権力がマスメディアを動員して実施するイメージ操作=大衆誘導こそ、大政翼賛体制の政治の大きな特徴である。

TPPにおいては、政府が美辞麗句を並べ立て、日本の主権者が被害を蒙る肝心のポイントについては一切触れずに、抽象論だけで情報操作を展開した。

その象徴が安倍晋三氏の記者会見発言内容だ。

「世界の国々は、海外の成長を取り込むべく、開放経済へとダイナミックに舵を切っています。

日本だけが内向きになってしまったら、成長の可能性もありません。

TPPはアジア・太平洋の「未来の繁栄」を約束する枠組みです。

全ての関税をゼロとした前提を置いた場合でも、我が国経済には、全体としてプラスの効果が見込まれています。

TPPの意義は、我が国への経済効果だけにとどまりません。日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります。そして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わります。

こうした国々と共に、アジア太平洋地域における新たなルールをつくり上げていくことは、日本の国益となるだけではなくて、必ずや世界に繁栄をもたらすものと確信をしております。

共通の経済秩序の下に、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、また、アジア・太平洋地域の安定にも大きく寄与することは間違いありません。

今がラストチャンスです。この機会を逃すということは、すなわち、日本が世界のルールづくりから取り残されることにほかなりません。

残されている時間は決して長くありません。だからこそ、1日も早く交渉に参加しなければならないと私は考えました。」

抽象的な美辞麗句だけで押し切ってしまうという不誠実な姿勢が鮮明に示されたものだ。

「核心に触れず美辞麗句でTPP押し売りの不誠実」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/tpp-766e.html

メディアが肝心な具体的問題点を明らかにせず、主権者をムードだけで洗脳してしまう。

この状況が維持されて、参院選を迎えれば、安倍政権支持勢力・補完勢力が参院でも多数を握ってしまうだろう。

参院選後、辺野古原発、TPPの地雷が火を噴くことになる。そのときになって後悔しても遅いのだ。

この事態を回避するには、「対米隷属」勢力に対抗し得る政治勢力が、最低でも参院3分の1議席を守ることが必要だ。

そのための方策を打ち立てないと手遅れになる。

以上、植草一秀の『知られざる真実』より
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-7d95.html

                                      • -

以下は、有料メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第526号「辺野古・TPP・原発反対の「静かなる革命」を展開」ではあるが、「本音言いまっせー! :世の中右を見ても左を見ても真っ暗闇じゃござんせんか」 より該当部分を転載
http://blogs.yahoo.co.jp/hellotomhanks/63866700.html


辺野古・TPP・原発反対の「静かなる革命」を展開

TPPにおいては、政府が美辞麗句を並べ立て、日本の主権者が被害を蒙る肝心のポイントについては一切触れずに、抽象論だけで情報操作を展開した。

その象徴が安倍晋三氏の記者会見発言内容だ。

 「世界の国々は、海外の成長を取り込むべく、開放経済へとダイナミックに舵を切っています。

 日本だけが内向きになってしまったら、成長の可能性もありません。

 TPPはアジア・太平洋の「未来の繁栄」を約束する枠組みです。

 全ての関税をゼロとした前提を置いた場合でも、我が国経済には、全体としてプラスの効果が見込まれています。

 TPPの意義は、我が国への経済効果だけにとどまりません。日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります。そして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わります。

 こうした国々と共に、アジア太平洋地域における新たなルールをつくり上げていくことは、日本の国益となるだけではなくて、必ずや世界に繁栄をもたらすものと確信をしております。

 共通の経済秩序の下に、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、また、アジア・太平洋地域の安定にも大きく寄与することは間違いありません。

 今がラストチャンスです。この機会を逃すということは、すなわち、日本が世界のルールづくりから取り残されることにほかなりません。

 残されている時間は決して長くありません。だからこそ、1日も早く交渉に参加しなければならないと私は考えました。」

抽象的な美辞麗句だけで押し切ってしまうという不誠実な姿勢が鮮明に示されたものだ。

「核心に触れず美辞麗句でTPP押し売りの不誠実」

http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/tpp-766e.html

メディアが肝心な具体的問題点を明らかにせず、主権者をムードだけで洗脳してしまう。

この状況が維持されて、参院選を迎えれば、安倍政権支持勢力・補完勢力が参院でも多数を握ってしまうだろう。

参院選後、辺野古原発、TPPの地雷が火を噴くことになる。そのときになって後悔しても遅いのだ。

この事態を回避するには、「対米隷属」勢力に対抗し得る政治勢力が、最低でも参院3分の1議席を守ることが必要だ。

そのための方策を打ち立てないと手遅れになる。

TPPにおける世論誘導の方法は、TPP賛成論を綺麗に見せる一方で、TPP反対論を醜悪に見せるという手法だった。

上記の安倍晋三氏の記者会見発言など、極めて空疎な抽象論の塊でしかない。

自由貿易は善。

開放経済へのダイナミズム。

日本だけが内向きで良いはずがない。

TPPは日本経済にプラス。

TPP参加へのラストチャンス。

世界のルール作りから取り残される。

これらが並べ立てられ、焦点の問題点には一切触れない。

ただ、

日本には世界に誇るべき国柄

息を飲むほど美しい田園風景

五穀豊穣を祈る伝統

世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度

を断固として守る

とだけ言う。

言うのは簡単だ。しかし、このなかに、明確な約束として示されている言葉は「国民皆保険制度」だけである。

他の部分は抽象論に過ぎない。

すなわち、これら抽象論の部分が破壊されても、具体的に破壊されたことを立証することはできない。単なる言葉遊びなのだ。

それでも、これだけ美辞麗句を並べ立てれば、国民を騙す、洗脳するには十分だ。

メディアはTPPをどのように伝えているか。

TPP反対論者としては農業関係者しか出さない。

鉢巻きを締めて集会を開催し、TPP断固反対のこぶしをあげる農業関係団体の様子しか映さない。

発言を紹介する人物は、JA全中代表の万歳章氏と農林系国会議員だけだ。

万歳氏は業界の既得権益を守る、守旧派代表として登場させるのに、これ以上の適役はいないという風貌の人物である。

TPPは日本経済にプラス、雇用拡大にプラス、消費者がモノを安く手に入れるためにもプラスだが、これまで高率関税に守られてきた農家にとっては深刻な問題。

関税撤廃で打撃を受ける農業関係者がTPP断固反対と鉢巻を巻いて気勢を上げている。

このようにしか、メディアは報道しない。

だから、世論調査結果を誘導できる。

しかし、TPPの核心はこんなところにはない。

TPPは「米国の米国による米国のための仕組み」であって、米国には利益を提供するが、日本の国益には反するものである。

米国が狙いをつけているもののなかで、最重要関心事項は、

1.農業
2.かんぽおよび共済
3.医療・医療機器・薬品

そして、米国が米国の期待する果実を得るために必要不可欠な「兵器」として位置付けているのが「ISDS条項」である。

米国主導で日本がTPPに引き込まれると、ISDS条項が発動され、上記3分野で取り返しのつかない事態が発生する。

この点についての十分な検討なくしてTPPに参加するというのは、完全なる「売国行為」である。


TPPに反対している中心は、これらの事情を知っている「インテリ層」である。

農業関係者だけが反対しているのではない。

農業関係者の一部は、反対運動を展開して、多額の補助金を獲得することを狙っている。

与党政治家は、この補助金獲得運動に加担して、政府予算での補助金配分において、甘い蜜を吸うことを目論んでいる。

こんなTPP反対論は、「エセTPP反対」に過ぎない。


本当に日本国民の幸福を考え、TPPがもたらす災厄を防ぐためにTPPに反対している者が、本当の愛国者である。

その中心は、間違いなくインテリ層である。

この、本当のTPP反対層が、「TPP反対主権者会議」、あるいは、「TP
P反対国民会議」のような運動体を編成して、理知的にTPP反対の啓蒙活動を展開する必要がある。

テレビメディアがTPP反対論者を紹介する際に、JAの万歳会長ではなく、この主権者会議の代表者を紹介させる方向に誘導することが大切だ。

 TPP反対は農家を救済することを目的とするものではない。日本の社会を守るための運動である。

 日本の文化、伝統、国民の生命、健康、安全、共同体社会を守るための運動である。

 日本の市場が現状で十分に開かれた市場であることを、事実に基づいて説明する必要がある。

国民皆保険が維持されても、混合診療が解禁され、保険医療の適用範囲が縮小されれば、日本の公的医療保険制度は実質的に崩壊する。

 コメ、乳製品、砂糖、小麦、牛肉は、それぞれ、特別な事情があって、国として守ることを決めている。

 TPPに参加すれば、かんぽや各種共済制度が破壊されてしまう可能性が高い。

 TPPが持つ毒の筆頭がISDS条項であって、この条項を受け入れると、各種制度が日本政府の判断を超えて、強制的に変更させられてしまう。

などを、丁寧に説明する必要がある。

TPPについての主権者の判断を仰ぐには、抽象的な総論ではなく、具体的な各論について、徹底的な論議が必要不可欠なのだ。

現状のマスメディア報道では、抽象的な総論だけで、TPP賛成のムードを生み出すことだけに精力が注がれている。

そうではなく、具体的な各論について、徹底的な論議を行うとともに、その各論をすべての主権者に伝達することが必要なのである。



JAがTPP粉砕集会を開いてTPP反対を唱えているだけが、TPP反対論ではないことを示す必要がある。

そのためには、市民が主導し、ここに国会議員、有識者を巻き込んで、冷静で客観性のある、「TPP反対主権者会議」のような運動体を構築することが必要である。

この手法は、辺野古移設問題、原発再稼働問題にも応用することができる。

市民が軸になり、「静かなる革命」を引き起こすことが必要だ。

TPP、辺野古原発問題に対する、市民と有識者による静かで冷静な「考察と行動」の運動を大きく広げてゆくことが効果的である。

党派や政治勢力の壁を取り払い、主権者に対する啓蒙活動を大きく広げることが大切であると思う。

この運動を主権者に効果的に伝達するには、市民メディアのプラットフォームを構築することが必要不可欠だ。

現在、多数に分立している市民メディアを統合する試みを迅速に進めなければならない。

(引用終わり)



追加:3月26日

中韓を知りすぎた男」 http://kkmyo.blog70.fc2.com/ より

TPPの罠      3月15日「金)

「TPP交渉自民容認」と新聞の一面にデカデカと踊っています。

1年前このTPP参加の危険性について多く書いて来ました。それと同時に「グローバル化」「自由貿易」という言葉に洗脳されている多くの著名人の危険性も指摘してきました。いわゆるTPPとはアメリカ式のグローバル化のことです。

田久保忠衛教授は「米国がTPPで主導権を握るようになったのは、東南アジアと結び,中国に対して軍事的優勢を維持する戦略の一要素である」「TPPを取っかかりにして積極的な貿易、投資を増やして日本経済を躍進させなければならない」「TPP交渉参加が決められない場合、日本の将来は極東の一小国に沈み込んでいくほかない」

また屋山太郎評論家は「TPP反対論者はアメリカに一方的に日本の利益を吸い取られるという被害妄想が見え隠れする」「農業も医療も、鎖国で守ることは出来ない」「グローバル化の中で、世界の人々が恩恵を受けているのはまぎれもない事実である」

このように私が尊敬してきた保守派の論客の多くは戦後の市場思想の枠から一歩も抜け出ていない。つまり政府は経済に強引に介入するのではなく社会の出来事は市場に任せるべきであり、社会の価値観や物の分配も市場が決定すべきである、いわゆる「市場が一番良く知っている」という市場崇拝から未だに抜け出ていません。

しかし昨日まで正しかったことが今日も正しいとは限らない。つまりこうした市場崇拝から結果として莫大な利益を得たのはグローバル企業だけでした。

保守の論客殿、今世界で何が起こっているか、しっかり目を凝らして眺めて下さい。それは格差の拡大です。グローバル企業に傷めつけられたアメリカ国民の惨状を知っていますか?

我々が知っている、健康保険にも老後の年金にも恵まれた健全なアメリカ人、青々とした芝生に囲まれた住宅に住む豊かな中流階級アメリカ人、そう、日本は長い間「豊かなアメリカ」に憧れていました。

しかしアメリカ時代を支えてきた中流階級は没落し、企業は成長する力を失った。労働者階級の生活は衰退の一途を辿り、底辺にいる人々はそこから這い上がれないままです。アメリカはいったい何を間違えたのか。アメリカの悲劇は無国籍のグローバル企業が政府を支配してしまったことです。

アメリカの惨状はいまや世界中に広がり、格差は広がる一方です。それは企業が国境を超えるにつれて、労働から社会、環境全ての面でコスト削減競争へ向かわせているからです。自国から企業が後進国に簡単に移転することによって大量解雇、労働条件の悪化、中小農家や中小企業の消滅、など、アメリカは悲惨な状況になっています。

アメリカ映画で見た「仕事と地域と従業員を愛する実業家」などがいなくなり、多くが次々と投資家に買収され、資産ばかりか従業員の積立年金まで食い荒らされてしまいました。

経済学者が長年提唱してきた「市場思想」「自由貿易論」が今日アメリカ国民を奈落の底に落としてしまったのです。つまり彼らは「自由市場の力が国境を超えることが出来れば、関税、補助金その他の「人為的」障壁は取り払われ、効率のよい企業だけが報われる。世界の国々は、自国で一番安く有利な物だけを生産するようになる。

いわゆるリカードによる1817年の比較優位説の影響をうけてしまった。「効率がよくなれば価格も低下して、誰もが利益を得ることが出来る」と経済学者も政治家もメディアも信じてしまった。しかし今日利益を得たのは一握りの裕福な人だけで、先進国の多くの人々は奈落の底に沈んでしまった。

TPPに参加するということは日本をこのような不幸なアメリカ型の社会にしてしまうということなのです。つまりアメリカの基準を日本が受け入れれば米国富裕層の利益を拡大させ、日本人は米国民と同じように奈落の底に落ちていくことになります。

アメリカは過去日本市場をこじ開けるために多くの「対日経済要求」を突きつけてきました。それが規制緩和であり構造改革です。しかし「日米構造協議」もあまり効果がなかった。

そこでアメリカは日本の市場をこじ開け、日本の国柄を変えてしまう新しい武器を手に入れた、それがTPPです。グローバル企業の真の狙いはTPPによって外国企業が日本で自由な活動が出来るように制度やルールを変えてしまうことなのです。

TPPの主課題はいまや自由貿易における関税ではありません。アメリカの狙いは非関税障壁と投資です。

保守派の論客たちは「世界を一つの巨大な市場に変えようと目論む勢力」の存在に気がついていない。すなわち「真の敵」が見えていないということです。

それでは真の敵とは、アメリカではない、アメリカという国を動かしている多国籍企業、いわゆるグローバル企業です。グローバル企業数百社が有する冨と力は途方も無く拡大しています。

1970年以降「グローバル化」は時の言葉になり、政治家も学者も識者も揃ってグローバル化は、全人類のあらゆる経済問題を解決してくれる「治療薬」として世界中に蔓延しました。そしてアメリカが提唱してきた「グロバリーゼーション」以外選択肢は存在しないといった強烈な印象を我々日本人は特に持ってしまいました。

何故ならアメリカ以外の国で戦後、自由貿易において「世界のグローバル化」の恩恵を一番受けた国は日本だからです。

日本は戦前、欧米列強の仕掛けたブロック経済化の壁に閉じ込められ自由に貿易の出来ないまま最後は石油まで止められてしまった。生きていくために、防衛のために、戦争に誘導され、最後は国土を破壊してしまった苦い経験があります。

それだけに戦後のアメリカが提唱した「政府のいかなる行動にも妨害されない完全なる自由市場」とういう思想を日本は宗教的信仰に近い価値として最終目標にしてしまった。しかし、そのような市場は実際にはアメリカを含めて世界に存在したためしがありません。

アメリカに国土を焦土化され何もかも失った日本は生きていくために、市場を徹底的に管理してきました。戦後の愛国心あふれた優秀な官僚は、よちよち歩きの日本においては完全なる自由市場は無理があると判断して市場を管理してきました。

アメリカの提唱した完全自由市場の思想は思想として、日本の愛国心あふれた官僚達は、市場は管理されるべきだと信じて来ました。もし市場の規制が完全になくなったとしたら、社会や環境に大混乱が生じ、大勢の人々が悲惨な境遇に陥ってしまう。

したがって日本市場は市場活動の行き過ぎがあっても、伝統、法的秩序、礼儀、やその他の文化的要素などがあることによって、道徳自制心が働き社会が破壊されることがない、それが日本武士道社会であると常に信じて来ました。

お陰で、世界を一つの巨大な市場に変えようと目論むアメリカのグローバル企業から日本社会を破壊されずに今日まできたのです。

安倍首相はTPPの罠を充分知り抜いています。しかし単略的に反対するわけにはいかない。尖閣諸島で中国と戦争一歩手前の状況です。そのためにも日米同盟を強化して中国を牽制する必要があります。(!!)

だから多くの政治家や国民がTPPに反対してくれることは大賛成なのです。民主主義国家の政治家は国民の多数意見を無視するわけにはいかない。そのことを一番良くわかっているのはアメリカのはずです。(!!)

自民党政治家の三分の二はTPP反対です。アメリカに反対できない安倍首相にとって政治家の三分の二の反対は大きな武器になります。個別の関税で譲歩しても、日本の国柄を壊してしまう「非関税障壁」の重要部分は国民の意思として拒否できます。

幸いにも閣内には将来の首相候補である稲田朋美内閣府特命担当大臣がいらっしゃる。おそらく自民党内ではTPPについて一番よく勉強しています。安倍首相も彼女から充分な知識を得ているはずです。

いずれにしても今後世界は国以上の力を持っているグローバル企業との戦いが待っています。

そして独自の価値観と冨を内在している日本だけが無国籍の超怪物企業との戦いに勝利することがでると信じています。


コメント
前半分の分析は正鵠を得ている。ただし、後半部がいけない。右翼的信条からくる安部首相に対する妄信があり、その考えには肯首しえないし、徹底して攻撃しなければならない。

私たちが、安部首相と経済・外交官僚をそこまで信頼(妄信)できる根拠、または信頼しなければならない理由はどこにあるのだろうか。もし、マスコミと一緒になって昨年末の総選挙での自民党の「圧勝」を根拠にするのであれば、絶対得票数では、自民党は票を減らしている事実を過小に見立てるのは公正ではない。または、マスコミの世論調査による安部政権の支持率のアップを理由にするのだろうか。そんなものは、何の根拠にもならない。
[紺屋風伯)





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