注目に値する原発事故関連ニュース2題


本日(2013年5月21日)、「東京新聞」紙上に注目すべき原発事故関連の記事が3つほど載った。そのうち2つは、原発事故直後、いろいろ手分けして作り出した放射能汚染地図--陸上のものと海上のもの--のその後の調査活動を伝えるものであった。

事故直後の2011年4月、空間線量地図は早川由紀夫(群馬大学)教授の足を使った線量調査の結果、最初の放射能汚染地図が作成された。 これはみんなの目にとまったものであり、これによってはじめて汚染の全体像が私たちに知れるようになったのである。その後かなり遅れて、文部科学省が似たような地図を発表することになる。

しかしそれからかなりの時間が経過した。汚染の実態も変化しているはずだが、それ以降は包括的な汚染地図は作成されていない。東京新聞のニュースによれば、IAEAが福島でこの7月から直接的な協力関係に入るという。かなり遅れるかもしれないが、汚染地図を作り直す計画のようだ。

海洋放射能汚染については、危惧されている割には調査が進んでいるとは言えない。事故当時、10月頃に東海大学海洋研究所が広域の海洋を調査し、放射性物質による海洋汚染地図を作成した。その後の太平洋の放射能汚染の実態は明らかにされていない。米軍の関係機関は秘密の調査を実施している可能性があるが、結果は発表されていない。太平洋の核汚染は予想図が米国サイドから小出しにされているが、それはあくまでも平面的な予想図である。

このたび上記とは別のチームが包括的な海洋調査を行ったようである。それが第2のニュースである。海流の流れと汚染の実態を垂直方向に解析しようとしている。いずれ、新たな海洋汚染地図が発表されるのではないかと期待される。

[以下引用]


東京新聞」2013年5月21日
IAEA 除染作業7月着手: 線量地図作製も

【ウィーン共同】国際原子力機関IAEA)が東京電力福島第1原発事故に伴う被災地の除染など福島県との共同事業実施のため7月22日から5日間の日程で同県に専門家を派遣し、本格的な作業を始めることが20日、分かった。IAEA幹部が明らかにした。県から放射線量の観測データの提供を受け、被災地も視察。線量地図の作成や除染、廃棄物の処理を支援する。

 IAEA福島県の除染に関する共同事業の期間は3年間。福島県は面積の約7割が森林で、IAEAによると、平地に比べ線量の正確な評価が難しい場所が多い。野生のイノシシの肉から基準値を超える放射性セシウムが検出されたこともある。ただ、森林をどう除染していくか方針は決まっていない。

このためIAEAは、1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故にかかわった専門家を同行。県とともに局地的に線量の高い場所の発見方法を探るほか、情報を反映した地図をインターネットなどで分かりやすく伝え、住民の安全に役立てることを検討している。

放射性物資うに汚染された恐れのある廃棄物の安全な焼却や、学校の校庭の土壌除去など除染についても議論し、国際的な基準や経験に基づいた方法を提案するとみられる。

IAEAは昨年12月に福島県と、除染や住民の健康分野での共同事業の実施で合意。今年2月下旬に事業着手に向けて調整のため、専門家を派遣した。

県は放射性物質が土壌や川、湖を移動したり、野生動物が摂取したりする経路の調査や除染技術の検討に関する共同事業を提案し、4月にIAEAと実施に関する取り決めを結んだ。


(参考)
2011年4月早川由紀夫(群馬大学)教授による空間線量地図 クリックすると拡大します。




東京新聞」2013年5月21日
海洋機構チーム:福島原発事故セシウム--海の深部で高濃度、黒潮の下に沈む?

東京電力福島第一原発事故で流れ出た放射性セシウムは、海の表層に比べ深いところで濃度が高かったとの分析結果を、海洋研究開発機構などの研究チームがまとめた。チームは「第一原発から流出した汚染するが温かい黒潮の下に沈み込んだのではないか」としている。千葉市で開催中の日本地球惑星科学連合2013年大会で21日に発表する。

チームは事故後の昨年1-2月、北海道沖からグアム島周辺に当たる北緯15度付近までの約3000キロにわたり計十か所で海水採取。セシウム134と137の濃度を調べた。

その結果、第一原発の南東約900キロで黒潮の南側にあたる地点では表面付近の濃度は低かったが、水深200−400メートル付近で1立方メートル当たり約21ベクレルのセシウム134が検出された。

第一原発の沖合約500キロの親潮黒潮がぶつかる地点では、水深150メートル付近で濃度が最も高く、同約19ベクレルのセシウム134を検出した。

調査海域のうち、水深800メートルまでのセシウム濃度を平均化すると、第一原発沖の海域が最も高かった。






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