放射線はどんな性質を持っているか?

今、放射線の人体に対するホルミシス効果について、シリーズで考え中。今回は、ちょっと横道にそれて、放射線が人体に及ぼす基本的性質についてまとめてみよう。

放射線は、その線種は多様である。よく知られているものは、α線, β線, γ線, χ線, n線(中性子線)などである。ほかの見方では、粒子線、エネルギー線の分類ができ、α線, β線, n線は粒子線つまり物質の波であり、γ線, χ線はエネルギー波である。

人体にとって有害な放射線は、必ずしも明らかになっていないが、電離放射線の性質だといわれている。つまり、放射線波が物質(人体)に当たった時に発する電磁エネルギーだと考えられる。その電磁エネルギーの強度は、線種によって異なる。以下の図はその違いを示している。

「電離放射線と物質との相互作用」 wikipedia 英語版より

α線は、He原子核であり、物質に当たると電磁エネルギーに転化し物質を貫通しない。β線は、電子(核内電子?)であり、振舞い方はα線と同じで、物質を貫通しない。一方、γ線, χ線, n線は、一部電磁エネルギーに転化するが、程度の差はあれ、そのまま物質を貫通する。物質が人体の場合、この放射線が発する電磁エネルギーが体細胞を破壊すると同時にDNAの損傷に大きくかかわってくるのである。

もちろん、この(自然)放射線によるDNAの損傷にたいして、生命体は進化の過程でDNA修復メカニズムを獲得してきた。この修復メカニズムは進化の過程そのものといってもよく、そのメカニズムはきわめて複雑精緻なものである。ただし、(自然+人為的)放射線被爆を繰り返し受けると、修復エラーの発生が確率的に増えてくる。これがガン化への決定的な第一ステップになるのである。

ガン化への行程はさらに複雑で、DNA損傷の集積が遺伝子突然変へ繋がっていく。生体はここにも別の防護メカニズムを準備しているのであるが、それを上回る突然変異の集積は、結果的に、がん細胞の発生へと発展していくことが知られている。

さて、放射線は、物質との相互作用で電磁エネルギーを放出することによって、その固有の破壊力を減じていく事実を上で見たのである。この事実に依拠していると思われる、次のような新説が登場してきた。



Abe-Effect (ナノ純銀粒子による放射性物質低減効果)
"Abe-Effect"といっても、これは安倍首相の「三本の矢」政策の経済効果のことではありません。
理学博士安部宣男氏は、ナノ純銀粒子の抗菌メカニズムを熟知し、それをいろいろな方面で利用してきた。3.11の福島第一原発事故以来、このナノ純銀粒子が放射能物質低減に効果があるのではないかと思い立ち、そのメカニズムの考察と実証実験をかなねてきたのである。

彼の考える、放射性物質低減メカニズムとは以下のようなものだ。
「ナノ純銀粒子の(は)高速電解パルス作用(80ボルト以上電気的エネルギー)で抗菌(力を持つ)。このナノ純銀粒子の電気的エネルギーが、放射性ヨウ素(γ線,)、放射性セシウム(主にγ線,)、放射性ストロンチウム(β線)、プルトニューム(α線)から放射されるエネルギーに作用することでエネルギー変換することで放射能を低減させます。大きな特徴として、ナノ純銀粒子は時間経過による消耗は一切なく、安定したエネルギー変換を繰り返し行います。」(放射能浄化Abe-Effect協議会「会報」第一号. 2012.5.11 より)

さらに、多くはないが、いくつかの実証実験として以下のものがある。

0.48μSv/h -----> 0.40μSv/h

  • 千葉県柏市クリーンセンターにて二次処理焼却灰にナノ純銀粒子を混入、6日後の結果

56,000Bq ---> 23,700Bq

(評価)
実験例では、放射能(放射線放射性物質)の大幅削減とは一概に言い難い(福島県郡山市の例など)。また、実験例の数がまだ十分とは言えない。さらに、理論的に、ナノ純銀粒子の高速電解パルスが、いかなるメカニズムで各種放射線をエネルギー変換できるのか、が十分説明されていない。
国内での研究協力体制の構築が必要であることはもとより、国際的認知を得る手段を取る必要もある。そのためには、注目を集めるに足りるだけの実験例を増やし、かつ緻密な理論の構築が急がれる。
このような不十分さがあるにせよ、この説が、「放射能は消せない」、つまり、放射能の毒性は放射性物質の自己崩壊による解毒を待つ以外にない、という定説を覆すかもしれない可能性を秘めた奇抜な発想である点は、十分評価できる。今後の展開がどうなるか、注目する必要がある。








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