経産省自作「エネルギー基本計画」が閣議決定:怒り!

官僚製作の原発再稼働を含む「エネルギー基本計画」が、安倍内閣の本日の閣議閣議決定された。

これは何を意味しているか。我が国の今までの原子力政策がそのまま踏襲されることになるのだ。もちろん法案ではないので国会審議はないだろう。したがって、批判をさしはさむ余地もない。法律ではないので、法的拘束力はないのだが、現実の原発政策は、この「計画」にそって進められ、この「計画」は法律以上の「国家の意思」(マスコミがよく言う「国は...」というやつ)として君臨し、権力の指針となるのだ。もちろん、この「エネルギー基本計画」の国会での承認という手続きを踏むかもしれないが、たぶんそれはないだろう。あったとしても、形式的なもので終わるだろう。

これが、「官僚支配の政治」の内実だ。極めて恐ろしいことだ。官僚の反国民性が突出している局面だ。福島原発事故などなかったに等しいという顔をした官僚どもの姿が目の前に浮かぶ。彼らの中には、放射能避難をしている避難住民のこと、命を危険にさらして事故対応に当たっている福一原発労働者のこと、などはどうでもよいはずだ。
時限付き独裁である大統領制の方がまだましかもしれない、批判すべき相手が明確なだけに。

■ エネルギー基本計画_20140411_001-1.pdf 直 pdf「エネルギー基本計画」_2014
経産省がホームページで「誇らしげ」に掲げた上記の資料を熟読することをお勧めする。

■抗議行動写真=11日正午ごろ、首相官邸前 写真:田中龍作=



以下は、閣議決定関連ニュース

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reuters
政府がエネルギー基本計画を閣議決定原発再稼動方針明記

2014年 04月 11日 13:51 JST

[東京 11日 ロイター] -政府は11日、原子力発電所の再稼動を進める方針などを明記した「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原発依存度を「可能な限り低減させる」としながらも、原発は「重要なベースロード電源」と位置づけ、3年前の原発事故以前と同様に活用していく姿勢を強調した。

基本計画は今後20年程度にわたる中長期のエネルギー政策の指針を示すもの。今回は第4次の計画だが、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原発事故以降では初めての改定となる。

<「原発ゼロ」消滅>

民主党前政権が2012年9月に、「2030年代に原発稼動ゼロが可能となるよう政策資源を総動員する」との方針を掲げたが、関係各方面との調整に失敗し、閣議決定を事実上断念。2012年末に発足した第2次安倍晋三政権が路線転換を明確に打ち出していたが、今回の閣議決定で、「原発ゼロ」が名実ともに消滅した。

基本計画では、原発について、「燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、優れた安定供給性と効率性を有している」などと、利点を強調。ただ、原子力規制委員会による審査が続く中、今後、どの程度の原発が再稼動するのか現時点では予想が難しく、将来の原発依存度や電源構成などの明示は見送られた。

<再稼動推進、新増設にも含み>

茂木敏充経済産業相閣議後の記者会見で、原発再稼動について「原子力規制委員会によって安全性が確認された段階で、立地自治体等、関係者の理解を得るため、事業者だけでなく国も説明する」と述べた。

今後のエネルギー構成の目標設定について茂木経産相は「できるだけ早く目標を設定する。2、3年かかるものではない」と述べた。

新基本計画では、電力業界から要望が強かった原発の新増設については記載されていない。新増設について茂木氏は「既存の原発の安全確認から進めており、新増設は次のステップの話。現段階で具体的な新増設の想定はしていない」と述べた。将来的な新増設の復活に含みを残したとみられる。

核燃料サイクル推進を維持>

計画では核燃料サイクルを従来通り推進する方針も明記した。原発から出る使用済み核燃料を化学的に処理(再処理)して取り出したプルトニウムを加工して既存の原発で再利用(プルサーマル発電)することについて、「再処理やプルサーマル等を推進する」とした。

核燃料サイクルは、発電しながら消費した以上の量の燃料を取り出すとされる「高速増殖炉」の実用化が中核だった。しかし、原型炉「もんじゅ」は、1995年に冷却材ナトリウム漏れによる火災事故が発生。一昨年には大規模な機器の点検漏れが見つかるなど、原子力分野におけるトラブルメーカー的な存在だ。技術的にもコスト面でも、実用化は極めて困難とみられている。

基本計画では、もんじゅについて「廃棄物の減容、有害度の低減、核不拡散関連技術の向上のための国際的な研究拠点と位置づける」と記載した。経産省幹部は記者会見で、もんじゅは発電利用を断念するのかどうかについて、「もんじゅには発電、増殖を含めた研究計画がある。(発電利用を)捨ててはいない」と述べた。

(浜田健太郎)

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東京新聞」夕刊
政権、原発ゼロ放棄 エネ計画、閣議決定

2014年4月11日

 政府は十一日の閣議で、国のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」を決めた。東京電力福島第一原発福島県)の事故を収束できず、核のごみの行き場も決められないなど多くの課題を残したまま、原発を「重要」と位置付けて活用する方針を明確にした。政府が民主党政権時に「国民的議論」を経て決めた原発ゼロ方針にはひと言も触れず、密室の議論で原発の維持推進へとかじを戻した。

 基本計画のとりまとめ作業は当初から「原発推進ありき」だった。政府は昨年十二月、原発推進に慎重な識者を差し替えた有識者会議で素案を策定。ことし一月六日まで一カ月にわたってパブリックコメント(意見公募)を実施して約一万九千件の意見が集まったが、公表したのは抜粋した百二十八種類と、対する政府の考え方だけ。脱原発を求める声がどれぐらいだったかの分析・公表もせず二月に計画案をつくった。三月からは自民党公明党から少人数の議員が集まった「ワーキングチーム」が、経済産業省幹部とともに密室で文章を調整。国民の意見を反映する姿勢は乏しかった。

 政府は民主党政権時の二〇一二年に、意見を公募し、原発ゼロを支持する回答が87%にのぼった。国民同士が話し合う「討論型世論調査」なども併せた議論の結果、三〇年代に原発の稼働をゼロにする方針をまとめた経緯がある。

 しかし今回の基本計画では、政府としていったん目指した原発ゼロ方針にひと言も触れないまま、原発維持を掲げた。

 原発への依存度は再生可能エネルギーの導入などで「低減する」と記載したが、茂木敏充経産相は記者会見で、減らすための具体策をあらためて問われると、「(基本計画を)読めば分かることは、わざわざ私が繰り返す必要はない」と答えなかった。

◆事故・賠償、棚上げ 「原子力ムラ」復活
 <解説> 政府が閣議決定したエネルギー基本計画は、安倍晋三政権の発足で息を吹き返した経済産業省文部科学省のほか、電力会社など原発を推進してきた「原子力ムラ」の思惑を反映した。

 経産省は「原発への依存度を下げる」としつつ、公明党自民党の一部が求めた「二〇三〇年に総発電量の30%を再生エネにする」という目標には強く抵抗し、二割以上を目指す努力目標にとどめた。逆に、電気料金が高くなっていることなど原発の必要性を訴える理由は細かく説明。文科省などが研究する新型の原子炉「高温ガス炉」の開発を「推進する」との一文も最終段階で滑り込ませた。

 大手電力会社でつくる電気事業連合会は、自民党が所属議員に基本計画についてアンケートを行った際、一部議員に「模範解答」を配るなど積極的に介入。結果、基本計画は原発を「重要」と位置付けるなど模範解答通りになった。

 半面、大事故が起きた場合の対応は棚上げ。政府と電力会社が押しつけ合う賠償責任については「総合的に検討する」と逃げるなど、基本計画は「原子力ムラ」に都合よくつくられた妥協の産物となった。

 すでに原子力規制委員会は十原発十七基の原発について新基準をクリアするか審査を進めており、夏にも鹿児島県の九州電力・川内(せんだい)原発が合格する可能性がある。政府は原発の海外輸出を増やす方針も固めている。

 使用済み核燃料の最終処分場や再利用計画も全くめどが立たないなど多くの課題を抱えたまま原発稼働を急ぐ安倍政権のエネルギー政策は無責任体質への逆戻りと言わざるをえない。 (吉田通夫)

 <エネルギー基本計画> エネルギー政策基本法で政府に策定が義務付けられた、国の中長期的なエネルギー政策の指針。おおむね3年ごとに見直し閣議決定する。電力やガス、石油などエネルギー企業の投資計画にも大きな影響を与える。民主党政権は2010年策定の計画で、地球温暖化防止の観点を重視し二酸化炭素の排出が少ない原発の新増設方針を明記した。原発事故で民主党政権原発ゼロ方針に転換し基本計画の見直しに着手したが、作業途上で自民党政権に交代した。

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「田中龍作ジャーナル」
原発全面解禁」 エネルギー基本計画、閣議決定

2014年4月11日 15:51


 福島の惨劇は何だったのだろうか。安倍内閣は今朝、「原発を重要なベースロード電源である」とした経産省の「エネルギー基本計画」を閣議決定した。

 「原発ゼロを撤回するな」…首相官邸前には閣議決定に反発する市民たちが正午頃から続々と詰めかけ怒りの声をあげた。呼びかけたのは毎週金曜日夕方「再稼働反対」を2年間に渡って訴えてきた首都圏反原発連合。

 閣議決定された「エネルギー基本計画(案)」を読むと唖然とすることだらけだ。開いた口が最後まで塞がらない。 

 先ず大前提からしてウソだ。第2節の2「化石燃料への依存の増大による国富の流出」で――火力発電のための輸入燃料費は、ベースロードとして原子力を利用した場合と比べ、約3・6兆円増加すると試算される、とある。(第8ページ)

 「原発はコストがかからないんだよ」。経産省はまだこんな古典的なマヤカシが通用すると思っているようだ。

 これが真っ赤なウソであることは元東電技術者の小野俊一氏が講演や著書で告発し続けている。小野氏が在職中の東電社内資料によると1kwh発電するのに福島第一原発は15円を要した。火力はわずか2〜3円だ(1995年頃)。

 原発は事故が起きなくてもこの高コストなのである。小野氏によれば原発の発電コストが図抜けて高いのは東電社内の常識だった、という。

   《大手を振って再稼働》
 
 第3節の3「原子力利用における不断の安全性向上と安定的な事業環境の確立」――原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。(第40ページ)

 再稼働がいよいよ大手を振って歩き始めたのだ。原子力規制委員会とは再稼働を正当化するための機関だったことが改めて明らかになった。九州電力川内原発は早ければ今夏にも再稼働するとの見方がある。

青森県六ケ所村・再処理工場。プルサーマル計画という壮大な虚構に巨額の税金を湯水のごとく注ぐ。=写真:筆者=
青森県六ケ所村・再処理工場。プルサーマル計画という壮大な虚構に巨額の税金を湯水のごとく注ぐ。=写真:筆者=

 再稼働のはてには、「プルサーマルの推進」「六ヶ所再処理工場の竣工」「MOX燃料加工工場の建設」「むつ中間貯蔵施設の竣工」とくる。(第43ページ)

 事故を起こした福島原発3号機はプルサーマル事業のひとつだ。フルMOX大間原発は、自治体から差し止め訴訟を起こされようとも建設、運転するのである。

 「再処理工場」は巨費をドブに捨てるに等しい。ある国会議員のもとに電力会社の幹部が説明に来て「先生、しばらく動かないから(事故は)心配ないですよ」と言ったそうだ。

 壮大な無駄と分かっていても、安倍政権と原子力村にとっては事業を続けることに意義があるのだ。血税を使われて危険な目に遭わされる国民はたまったものではない。

 第10節「エネルギー国際協力の展開」で、原発輸出は「(相手国の)エネルギー源確保のため不可避」とした。(第66ページ)

 ここまでくればもう原発全面解禁である。安倍政権はすべてを「3・11」前に戻した。

 官邸前にはたまたま今日が「休み」のサラリーマンや孫のためにも原発をなくしたいという年金生活者たちが訪れて、「閣議決定に反対」の声をあげた。

 さいたま市の会社員(男性・50代)は2年間ほぼ毎週のように「金官」に参加してきた。男性は「くやしい」と奥歯を噛みしめた。「閣議決定されてもあきらめずに声を合わせていくことが大事。強い民意を見せつけることで国にプレッシャーをかけたい」。

 「怒りが湧く」と話すのは都内の会社員(男性・40代)だ。「大学院で物理を学んだ身としては、あんな危険な物を動かしてはならないという気持ちで来た」。

http://tanakaryusaku.jp/


追 加

東京新聞」朝刊
原発推進 エネ計画閣議決定 原子力ムラ復権
2014年4月12日



 政府は十一日、国のエネルギー政策の指針となる新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原子力規制委員会の基準に適合した原発を再稼働させ、民主党政権が打ち出した二〇三〇年代の「原発稼働ゼロ」方針を撤回することを正式に決めた。
 計画では、原発新増設も必要な原発の数などを「見極める」と含みを残した。原発輸出は、東京電力福島第一原発事故の教訓を国際社会と共有し、原子力の安全性向上に貢献するとして積極的に進める考えを示した。将来の原発再生可能エネルギーの電源比率をどうするかの具体的な数値目標は盛り込まなかった。
 原発事故後、初の計画。政府は一月の決定を目指したが、与党から原案は原発推進の色が濃すぎるとの異論が出て決定が遅れた。

◆エネ計画ポイント
原発は重要なベースロード電源
▼規制基準に適合した原発は再稼働を進める
原発依存度は可能な限り低減。安定供給などの観点から確保していく規模を見極める
再生可能エネルギーは二〇一三年から三年程度、導入を最大限加速し、その後も積極的に推進する
もんじゅは高レベル放射性廃棄物の減容化の国際研究拠点にする

経産省主導の舞台裏
 安倍政権は「エネルギー基本計画」で原発推進路線を鮮明にした。東日本大震災から三年で、東京電力福島第一原発事故を忘れたかのような姿勢。電力会社や経済産業省という「原子力ムラ」が復活した。 (吉田通夫、城島建治)
 計画案の了承に向けた与党協議が大詰めを迎えた三月下旬。経産省資源エネルギー庁の担当課長は、再生可能エネルギー導入の数値目標の明記を求められ「できません」と拒否した。
 「その態度はなんだ」。要求した自民党長谷川岳(がく)参院議員によると、課長は椅子に反り返り、足を組んだまま受け答えしたという。長谷川氏の激怒で協議は中断した。
 与党は原発を「重要」と位置づける部分は容認し、推進の立場は政府と同じだが、脱原発を求める世論を気にして一部議員は再生エネの数値化にこだわった。
 だが、原発依存度の低下につながるのを懸念した経産省は本文に書き込むのを拒否。目標を拘束力の弱い脚注に入れ、本文にそれを「上回る水準の導入を目指す」との対案を与党に提示し「大幅に上回る」との表現で合意した与党の指示をも拒み「さらに上回る」との再提案で押し切った。
 電力各社も介入した。
 電力各社でつくる電気事業連合会は、自民党が所属議員に計画案への考えを聞いたアンケートに便乗。若手らに原発の維持・拡大につながる核燃料サイクル事業を「着実に推進する」と書くよう説いた。
 原子力ムラの動きの背後には、経産省が影響力を強める首相官邸がある。
 安倍晋三首相の黒子役を務める首席秘書官は、経産省出身でエネルギー庁次長も務めた今井尚哉(たかや)氏。首相の経済政策の実権は、今井氏と経産省が握っている。
 昨年七月。今年四月から消費税率を8%に引き上げるか迷っていた首相は、税率を変えた場合に経済が受ける影響を試算することを決めた。指示した先は財務省でなく経産省だ。
 歴代政権の大半は「省の中の省」と呼ばれる財務省を頼ったが、安倍政権は経産省に傾斜。その姿勢が原子力ムラを勢いづかせた。



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