福島被曝者に「被曝者手帳」を!(2)

■近況報告
4月に入って,microsoft 社の脅しに乗って,私はシステムをwindows XPからwindows 7 に乗り換えました。予想していたこととはいえ、そのことによって様々な不具合が生じ、それを修正するのに時間がかなりかかってしまいました。一番困ったことは、インターネットに繋がらなくなったことと、文字化けがひどかったこと。システムが安定しない時の文字化けはバカにはなりません、初めての舞台に立って右も左も分からないのと一緒です。
現在も、ブログ作成に大きな制約が生じています。その制約の範囲内で、ブログを再開しました。うまい調整方法が見つからないので、将来、ブログの「引っ越し」も視野に入れなければならないでしょう。

                          • -

■ 「被爆者手帳」の現行法制度はどうなっているか?

1.なぜ国家行政によらなければならないのか。
今回は、放射能被曝に対する、国家の法体系がどうなっているのかを整理して見ましょう。
「原爆」に拠ろうと「原発」に拠ろうと、健康被害に対する保護は、法的規制、つまり国家的事業によらなければならない理由はいくつかあります。その内の、重要なものは、いずれのケースも被害者の所在地が放射能被災地、広島市長崎市福島第一原発周辺市町村、に限定されないという点です。全国に拡散していますし、海外にも多くの被害者が居住するというのが実情です。更に、行政の日本に特有な中央集権体質が大きく影響しています。つまり、放射能被災地を中心に健康被害に対する保護政策に地方行政が取り組もうとすると、被災者を分断し不公平が生じてしまうという事態です。もちろん、「地方分権」が完全な姿で確立していれば、地方行政府が、被害者の保護政策を全国規模で展開し、海外にもその政策を拡充することも可能でしょう。正統性(オーソリティ)の観点からはそれが正論でしょう、財源の問題は別の問題としてつきまとうでしょうが。
現下の日本ではそれは不可能に近いと思われます。明治以降の政治体制、とりわけ行政組織が極端な中央集権体制で成り立っているからです。地方行政府は、中央省庁の地域限定の下請け行政を行う機関になっているのが現状ですし、多くの人はそれが当然と考えている有り様です。
この国家行政と地方分権化のあり方を巡る問題が、、「被爆者手帳」の確立を目指す際に、考慮して置かなければならない原則的な事柄あることを、確認しておきましょう。

2.既存の「被爆者手帳」は、国家的事業として成立した。
広島市長崎市への悲惨な原爆投下の真の責任追及は現在もなされていないし、その動きの兆しもない。熱線による死者は大きな数に上った。さらにその死を免れた人々でも、放射線被曝障害は甚大であったが、その実数は必ずしも定かではない。というのは、福島原発事故と同様に、当初は被害を小さく見せようとする行政努力(この場合、占領軍の占領政策)がなされ、実態は闇に隠されていた。
原爆による放射線被災者の問題を白昼のもとに引き出し、大きな「原爆反対運動」の火付け役になったのは、戦勝国間の広島・長崎以降の原爆開発競争であった。その隠された被害者は、世界を見回せば多くいたはずであるが、日本国内では「第五福竜丸」のビキニ環礁での放射能被曝者であって、この事件が火を吹いた。火をつけたのは、東京杉並区の女性たちであった。この運動は、予想をはるかに超えた運動に発展し、10年近くを経過していたが、広島・長崎の原爆被害の実態を、明らかにしていった。この経過とそこからの教訓については別に稿を改める予定である。
この原爆反対運動に支えられて成立したのが「被爆者健康手帳」であり、ここで国家の行政が動き、日本的な政治の仕組みの中で被爆者救済が初めて実現したのだった。これを実現させた、当時の市民意識の初々しい活力とマスコミの正しい報道に驚かされると同時に,このことに心からの敬意を表したいのである。

3.「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」((1957年)の成立
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」((1957年)は、画期的な法律であった。これによって、多分世界に類を見ない、原子爆弾に拠る被爆者救済の政治が動き始めたのだった。さらに、10年後「原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律」(1968年)が制度を補足した。現在は、この2つの法律は廃止され、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(1994年)と「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則」(1995年)に統合されている。

■ 現行法規である「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」と「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則」は入手が比較的簡単である。ここでは、最も重要と思われる先行法律を2つ引用しておこう。

法律第四十一号(昭三二・三・三一)
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律

目次
 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 健康管理(第三条―第六条)
 第三章 医療(第七条―第十四条)
 第四章 原子爆弾被爆者医療審議会(第十五条―第十七条)
 第五章 雑則(第十八条―第二十四条)
 附則

   第一章 総則
 (この法律の目的)
第一条 この法律は、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾被爆者が今なお置かれている健康上の特別の状態にかんがみ、国が被爆者に対し健康診断及び医療を行うことにより、その健康の保持及び向上をはかることを目的とする。
 (定義)
第二条 この法律において「被爆者」とは、次の各号の一に該当する者であつて、被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう。
 一 原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内にあつた者
 二 原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に前号に規定する区域のうちで政令で定める区域内にあつた者
 三 前二号に掲げる者のほか、原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾放射能の影響を受けるような事情の下にあつた者
 四 前三号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の胎児であつた者

   第二章 健康管理
 (被爆者健康手帳)
第三条 被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地とする。以下同じ。)の都道府県知事(その居住地が広島市又は長崎市であるときは、当該市の長とする。以下同じ。)に申請しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の申請に基いて審査し、申請者が前条各号の一に該当すると認めるときは、その者に被爆者健康手帳を交付するものとする。
3 被爆者健康手帳に関し必要な事項は、政令で定める。
 (健康診断)
第四条 都道府県知事は、被爆者に対し、毎年、厚生省令で定めるところにより、健康診断を行うものとする。
 (健康診断に関する記録)
第五条 都道府県知事は、前条の規定により健康診断を行つたときは、健康診断に関する記録を作成し、かつ、厚生省令で定める期間、これを保存するものとする。
 (指導)
第六条 都道府県知事は、第四条の規定による健康診断の結果必要があると認めるときは、当該健康診断を受けた者に対して必要な指導を行うものとする。

   第三章 医療
 (医療の給付)
第七条 厚生大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾放射能に起因するものでないときは、その者の治ゆ能力が原子爆弾放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。
2 医療の給付の範囲は、次のとおりとする。
 一 診察
 二 薬剤又は治療材料の支給
 三 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
 四 病院又は診療所への収容
 五 看護
 六 移送
3 医療の給付は、厚生大臣が第九条第一項の規定により指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に委託して行うものとする。
 (認定)
第八条 前条第一項の規定により医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生大臣の認定を受けなければならない。
2 厚生大臣は、前項の認定を行うに当つては、原子爆弾被爆者医療審議会の意見を聞かなければならない。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかであるときは、この限りでない。
 (医療機関の指定)
第九条 厚生大臣は、その開設者の同意を得て、第七条の規定による医療を担当させる病院若しくは診療所又は薬局を指定する。
2 指定医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
3 指定医療機関が次条第一項の規定に違反したとき、担当医師に変更があつたとき、その他指定医療機関に第七条の規定による医療を担当させるについて著しく不適当であると認められる理由があるときは、厚生大臣は、その指定を取り消すことができる。
4 厚生大臣は、前項の規定により指定を取り消す場合には、当該医療機関の開設者に対して、弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、書面をもつて、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をなすべき理由を通知しなければならない。
5 厚生大臣は、医療機関の指定又は指定の取消を行うに当つては、あらかじめ原子爆弾被爆者医療審議会の意見を聞かなければならない。
 (指定医療機関の義務)
第十条 指定医療機関は、厚生大臣の定めるところにより、医療を担当しなければならない。
2 指定医療機関は、医療を行うについて、厚生大臣の行う指導に従わなければならない。
 (診療方針及び診療報酬)
第十一条 指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、健康保険の診療方針及び診療報酬の例による。
2 前項に規定する診療方針及び診療報酬の例によることができないとき、及びこれによることを適当としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生大臣原子爆弾被爆者医療審議会の意見を聞いて定めるところによる。
 (診療報酬の審査及び支払)
第十二条 厚生大臣は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、かつ、指定医療機関が前条の規定によつて請求することができる診療報酬の額を決定することができる。
2 指定医療機関は、厚生大臣が行う前項の決定に従わなければならない。
3 厚生大臣は、第一項の規定により指定医療機関が請求することのできる診療報酬の額を決定するに当つては、社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会の意見を聞かなければならない。
4 国は、指定医療機関に対する診療報酬の支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金に委託することができる。
 (報告の請求及び検査)
十三条 厚生大臣は、前条第一項の審査のため必要があるときは、指定医療機関の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員をして指定医療機関についてその管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。
2 指定医療機関の管理者が、正当な理由がなく、前項の報告の求に応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の同意を拒んだときは、厚生大臣は、当該指定医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができる。
 (医療費の支給)
第十四条 厚生大臣は、被爆者が、緊急その他やむを得ない理由により、指定医療機関以外の者から第七条第二項各号に規定する医療を受けた場合において、必要があると認めるときは、医療の給付に代えて、医療費を支給することができる。被爆者が指定医療機関から第七条第二項各号に規定する医療を受けた場合において、当該医療が緊急その他やむを得ない理由により同条第一項の規定によらないで行われたものであるときも、同様とする。
2 前項の規定によつて支給する医療費の額は、第十一条の規定により指定医療機関が請求することができる診療報酬の例により算定した額とする。ただし、現に要した費用の額をこえることができない。
3 厚生大臣は、第一項の規定により医療費を支給するについて必要があるときは、当該医療を行つた者又はこれを使用する者に対し、その行つた医療に関し、報告若しくは診療録若しくは帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員をして質問させることができる。

   第四章 原子爆弾被爆者医療審議会
 (設置及び権限)
第十五条 厚生大臣の諮問に応じ、被爆者の医療等に関する重要事項を調査審議させるため、厚生省に、附属機関として、原子爆弾被爆者医療審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、被爆者の医療等に関する事項につき、関係各大臣に意見を具申することができる。
 (委員)
第十六条 審議会は、委員二十人以内で組織する。
2 委員は、学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから厚生大臣が任命する。
3 学識経験のある者のうちから任命された委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、非常勤とする。
 (政令への委任)
第十七条 この法律に定めるもののほか、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は、政令で定める。

   第五章 雑則
 (非課税)
第十八条 この法律により支給を受けた金品を標準として、租税その他の公課を課することができない。
 (差押の禁止)
第十九条 この法律により金品の支給を受ける権利は、差し押えることができない。
 (交付金
第二十条 国は、政令の定めるところにより、この法律又はこの法律に基く命令の規定により都道府県知事が行う事務に要する費用を都道府県(広島市又は長崎市の長が行う事務に要する費用については、広島市又は長崎市とする。)に交付する。
 (権限の委任)
第二十一条 この法律に定める厚生大臣の権限の一部は、政令の定めるところにより、都道府県知事に委任することができる。
 (省令への委任)
第二十二条 この法律で政令に委任するものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その報行について必要な細則は、厚生省令で定める。
 (罰則)
第二十三条 この法律による健康診断及び指導の実施の事務に従事した者が、その職務に関して知得した人の秘密を正当の理由なしに漏らしたときは、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第二十四条 第七条第二項各号に規定する医療を行つた者又はこれを使用する者が、第十四条第三項の規定により報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を命ぜられて、正当の理由なしにこれに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条同項の規定による当該職員の質問に対して正当の理由なしに答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、一万円以下の過料に処する。

   附則
 (施行期日)
1 この法律は、昭和三十二年四月一日から施行する。
 (経過規定)
2 第二条各号の一に該当する者は、この法律の施行後三月間は、第二条の規定にかかわらず、被爆者健康手帳を受けないでも被爆者とみなす。
 (厚生省設置法の一部改正)
3 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
  第五条第二十号の次に次の一号を加える。
  二十の二 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三十二年法律第四十一号)の定めるところにより、医療機関を指定し、並びに医療の給付に関する必要な診療方針及び診療報酬を定めること。
  第九条第三号の次に次の一号午後 12:55 01/08/24加える。
  三の二 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律を施行すること。
  第二十九条第一項の表中精神衛生審議会の項の次に次の一項を加える。
 原子爆弾被爆者医療審議会 厚生大臣の諮問に応じて、原子爆弾被爆者の医療等に関する重要事項を調査審議すること。
 (社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)
4 社会保険診療報酬支払基金法の一部を次のように改正する。
  第十三条第二項中「又は未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)第二十二条第三項」を「、未帰還者留守家族等援護法(昭和二十八年法律第百六十一号)第二十二条第三項又は原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三十二年法律第四十一号)第十二条第三項」に改め、「戦傷病者戦没者遺族等援護法第十九条第四項」の下に「、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律第十二条第四項」を加える。
 (地方税法の一部改正)
5 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。
  第七十二条の十四第一項ただし書中「若しくは児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)」を「、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)若しくは原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三十二年法律第四十一号)」に、「若しくは育成医療の給付」を「、育成医療の給付若しくは医療の給付」に改める。
  第七十二条の十七第一項ただし書中「若しくは児童福祉法」を「、児童福祉法若しくは原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」に、「若しくは育成医療の給付」を「、育成医療の給付若しくは医療の給付」に改める。

(厚生・内閣総理大臣署名) 




法律第五十三号(昭四三・五・二〇)
原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律

 (目的)
第一条 この法律は、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾被爆者であつて、原子爆弾の傷害作用の影響を受け、今なお特別の状態にあるものに対し、特別手当の支給等の措置を講ずることにより、その福祉を図ることを目的とする。
 (特別手当の支給)
第二条 都道府県知事は、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三十二年法律第四十一号。以下「原子爆弾被爆者医療法」という。)第八条第一項の認定を受けた者であつて、同項の認定に係る負傷又は疾病の状態にあるものに対し、特別手当を支給する。
2 前項に規定する者は、特別手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3 特別手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、一万円とする。
4 特別手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、第一項に規定する要件に該当しなくなつた日の属する月で終わる。
 (特別手当の支給の制限)
第三条 特別手当は、前条第一項に規定する者、その配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十七条第一項に定める扶養義務者で前条第一項に規定する者の生計を維持するものの所得につき所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の規定により計算した前年分の所得税の額(この所得税の額を計算する場合には、同法第九十二条及び第九十五条の規定を適用しないものとする。以下同じ。)が政令で定める額をこえるときは、その年の六月から翌年の五月までは、政令の定めるところにより、その全部又は一部を支給しない。
2 前項の規定は、前条第一項に規定する者が同条第二項の認定の申請をした場合において、その申請をした日の属する月が一月、二月、三月又は四月であるときは、前項中「前年分」とあるのは「前前年分」と、「その年の六月から翌年の五月まで」とあるのは「前条第二項の認定の申請をした日の属する月の翌月からその年の五月まで」と読み替えて適用する。
 (届出)
第四条 第二条第二項の認定を受けた者は、厚生省令の定めるところにより、都道府県知事に対し、同条第一項に規定する負傷又は疾病の状態、前条第一項に規定する所得税の額その他の厚生省令で定める事項を届け出なければならない。
2 都道府県知事は、特別手当の支給を受けている者が正当な理由がなくて前項の規定による届出をしないときは、その支払を一時差しとめることができる。
 (健康管理手当の支給)
第五条 都道府県知事は、原子爆弾被爆者医療法第十四条の二第一項に規定する特別被爆者(以下単に「特別被爆者」という。)であつて、造血機能障害、肝臓機能障害その他の厚生省令で定める障害を伴う疾病(原子爆弾放射能の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)にかかつているもののうち、次の各号のいずれかに該当するものに対し、健康管理手当を支給する。ただし、その者が特別手当の支給を受けている場合は、この限りでない。
 一 六十五歳以上の者
 二 厚生省令で定める範囲の身体上の障害がある者
 三 配偶者のない女子又はこれに準ずるものとして厚生省令で定める女子であつて、十八歳未満の子、孫若しくは弟妹又は厚生省令で定める程度の廃疾の状態にある二十歳未満の子、孫若しくは弟妹を扶養しているもの
2 前項に規定する者は、健康管理手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3 都道府県知事は、前項の認定を行なう場合には、あわせて当該疾病が継続すると認められる期間を定めるものとする。この場合においては、その期間は、第一項に規定する疾病の種類ごとに厚生大臣が定める期間内において定めるものとする。
4 健康管理手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、三千円とする。
5 健康管理手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、その日から起算してその者につき第三項の規定により定められた期間が満了する日(その期間が満了する日前に第一項に規定する要件に該当しなくなつた場合にあつては、その該当しなくなつた日)の属する月で終わる。
 (準用)
第六条 第三条及び第四条の規定は、健康管理手当について準用する。
 (医療手当の支給)
第七条 都道府県知事は、原子爆弾被爆者医療法第二条に規定する被爆者であつて、同法第七条第一項の規定による医療の給付を受けているものに対し、その給付を受けている期間について、政令の定めるところにより、医療手当を支給する。
 (医療手当の支給の制限)
第八条 医療手当は、前条に規定する者、その配偶者又は民法第八百七十七条第一項に定める扶養義務者で前条に規定する者の生計を維持するものの所得につき所得税法の規定により計算した前年分(一月から四月までの間に受けた医療の給付に係る医療手当については、前前年分とする。)の所得税の額が政令で定める額をこえるときは、支給しない。
 (介護手当の支給)
第九条 都道府県知事は、特別被爆者であつて、厚生省令で定める範囲の精神上又は身体上の障害(原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)により介護を要する状態にあり、かつ、介護を受けているものに対し、その介護を受けている期間について、政令の定めるところにより、介護手当を支給する。ただし、その者が介護者に対し介護に要する費用を支出しないで介護を受けている期間については、この限りでない。
2 前条の規定は、介護手当について準用する。
 (費用の支弁等)
第十条 特別手当、健康管理手当、医療手当及び介護手当の支給並びにこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により都道府県知事が行なう事務の処理に要する費用は、当該都道府県の支弁とする。
2 国は、政令の定めるところにより、前項の規定により都道府県が支弁する費用(介護手当に係るものを除く。)を当該都道府県に交付する。
3 国は、政令の定めるところにより、第一項の規定により都道府県が支弁する費用のうち、介護手当の支給に要する費用についてはその十分の八を、介護手当に係る事務の処理に要する費用についてはその二分の一を負担する。
 (不正利得の徴収)
第十一条 都道府県知事は、偽りその他不正の手段により特別手当、健康管理手当、医療手当又は介護手当(以下「特別手当等」という。)の支給を受けた者があるときは、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
 (受給権の保護)
第十二条 特別手当等の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。
 (公課の禁止)
十三条 租税その他の公課は、特別手当等として支給を受けた金額を標準として、課することができない。
 (戸籍事項の無料証明)
第十四条 市町村長(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市においては、区長とする。)は、第二条第一項又は第五条第一項に規定する者に対して、当該市町村の条例の定めるところにより、これらの者の戸籍に関し、無料で証明を行なうことができる。
 (広島市及び長崎市に関する特例)
第十五条 この法律中「都道府県知事」又は「都道府県」とあるのは、広島市又は長崎市については、「市長」又は「市」と読み替えるものとする。
 (再審査請求)
第十六条 広島市又は長崎市の長が行なう特別手当等の支給に関する処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、厚生大臣に対して再審査請求をすることができる。
 (実施命令)
第十七条 この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生省令で定める。

   附 則
 (施行期日)
1 この法律は、昭和四十三年九月一日から施行する。
 (原子爆弾被爆者医療法の一部改正)
2 原子爆弾被爆者医療法の一部を次のように改正する。
  目次中「第十四条の八」を「第十四条の七」に改める。
  第十四条の八を削る。
  第二十条中「基く」を「基づく」に改め、「及び医療手当の支給に要する費用」を削る。
  第二十条の二中「又は医療手当の支給」を削る。
 (原子爆弾被爆者医療法の一部改正に伴う経過措置)
3 この法律の施行前に原子爆弾被爆者医療法第七条第一項の規定により医療の給付を受けた被爆者に対する医療手当の支給については、なお従前の例による。
 (地方財政法の一部改正)
4 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。
  第十条第八号の二の次に次の一号を加える。
  八の三 原子爆弾被爆者に対する介護手当の支給及び介護手当に係る事務の処理に要する経費
 (厚生省設置法の一部改正)
5 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
  第九条第三号の次に次の一号を加える。
  三の二 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(昭和四十三年法律第五十三号)を施行すること。


(大蔵・厚生・自治内閣総理大臣署名) 

                                                • -

追加(2014.10.19)

上記引用の2法はその後様々な改正を繰り返し、現在に至っている。その経過の概略は以下の表にまとめられている。参考にしてください。

被爆者対策の変遷.pdf 直




注意事項:

Internet Explorer 10, 11 をお使いの方は、<互換表示設定>に「 hatena.ne.jp 」項目を追加処理されますと、本ブログ画面を正常に見ることができます。設定の詳細は、以下をご参照ください。

http://furoshiki.hatenadiary.jp/entry/2013/11/25/012135
http://windows.microsoft.com/ja-jp/internet-explorer/use-compatibility-view#ie=ie-11-win-7
 

/*