「東京新聞」から 福島関連2つの記事を紹介

2014年6月10日 朝刊1面
楢葉 来春にも帰還宣言だが… 農家「生活成り立たず」

 東京電力福島第一原発事故で全住民が避難している福島県楢葉(ならは)町が、早ければ来春にも帰還を宣言する。町の主産業は農業。ある専業農家を例に、帰還して暮らしていけるのかみてみると、田んぼや水源が放射能汚染で脅かされ続けている厳しい現実があった。 (大野孝志、山川剛史)

 いわき市に避難中の専業農家塩井淑樹(よしき)さん(63)の協力を得て、本紙は楢葉町の自宅や周辺、田んぼ、そこに流れ込む水の水源地など暮らしにかかわる場所の汚染状況を調べた。

 測定の結果は図の通り。国の本格除染は終わったものの、放射線量を測ると居間が毎時〇・三マイクロシーベルト弱、田んぼは〇・七マイクロシーベルト前後あった。屋外にいる時間が長いだけに、一般人の年間被ばく線量限度(一ミリシーベルト)の三〜四倍を覚悟する必要がありそうな環境だ。

 健康面だけでなく、専業農家として農作物が収入になるかが重要だ。独協医科大の木村真三准教授の協力で採取した田んぼの土の放射性セシウム濃度を測定すると、高い地点は一キログラム当たり約三八〇〇ベクレルとかなり高い値を示した。田んぼで使う水を引き込むため池や、水源地の汚染も調べると、人里から離れ、上流側になるほどセシウム濃度が高くなる傾向は明らかだった。

 農林水産省の調査では、カリウムを適正量まけばイネはあまりセシウムを吸収せず、食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を大きく下回るとの結果が出ている。

 塩井さんはこうしたデータは知っているが、「いくら基準を満たしたコメだと言われても、田んぼにはしっかりセシウムが残っている。被ばくのことより、作物を売って生計が成り立つかどうか見極めている。生活の先行きが見えないうちは帰らない」と話した。

 基準を満たしたコメはJAが全量を買い上げ、当面は政府備蓄米として国に買い取ってもらう。福島県の担当者は「なるべく通常に流通させたいが売れない。当面は備蓄米を活用する」と話した。ただ備蓄米は毎年、国と都道府県が協議して出荷量の枠を決め、その枠内でJAが落札する仕組み。JAが農家から集めたコメの売却枠を十分確保できるかどうかは不透明だ。

◆新しい農地提供も
 元国会図書館職員で内外の農業事情を調べてきた農業情報研究所主宰の北林寿信(としのぶ)氏の話 カリウム散布などセシウム吸収抑制策により、作られたコメは安全かもしれない。しかし、熱心な農家ほど喜んで食べてもらうのが喜び。無理に営農を再開させても、生きがいは感じられないだろう。国や自治体は、新しい農地を提供する道も模索すべきだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014061002000115.html

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2014年6月10日 朝刊2面
「田起こし」地中を汚染 ・ 除染事実上負可能に・楢葉の農家対策遅れ、苦悩

東京電力福島第一原発事故で被災した福島の農家を苦しめているのが、2011年秋から各地で十指された「田起こし」だ。国の除染が始まらず、荒れた農地をほっておけない農家は、放射性物質が降り積もった農地を耕した。その結果、汚染は表土から地中へと拡散した。カリウムを巻き、農作物が放射性セシウムを吸収しにくくすれば、食品基準はほぼ満たせる。しかし、そんな農業のあり方に抵抗を感じる農家は少なくない。(山川剛史、大野孝志)

田畑に積もったセシウムの約九割は地表5センチ。までにとどまっている--。このことは事故発生から間もないころから、いろいろな調査でわかっていた。

汚れた土を除去すれば、農地から大半の放射性物質はなくなり、基本的には安心して農業が続けられるはずだった。

だが、和里撮った汚染土をどこの保管するかや、長年かけて改良してきた土を失う問題もあり、農地の対応は遅れに遅れた。

日々雑草に覆われる農地の状況に、焦りを強めた農家は次々と田起こしを進めた。2011年11月に本誌が取材したところ、田起こしは福島第一原発ノ20-30キロ圏にある南相馬市田村市広野町川内村など広い範囲で進んでいた。不用意な田起こしはセシウム汚染の長期化につながる。紙面や取材を通じ国や自治体、JAに問題提起したが、「深く耕せば、問題ないだろう」と危機感は薄かった。

結局、国は農地の除染をする代わりに、深く耕して表土の放射性物質濃度を薄め、鉱物ゼオライトセシウムと似た性質のカリウムを土に混ぜ、作物がセシウムなどを吸い上げるのを抑えるさくを中心に据えた。

農林水産省は、イネが急速に育つ6月までに農地1キログラムあたり10ミリグラム以上のカリウム成分が含まれるよう注意するば、食品基準(1kgあたりセシウム100ベクレル)を超えるようなコメはほぼ根絶できる—との報告書をまとめている。

だが今回、本誌が楢葉町で実施した調査で確認された東リ、表土付近に限られていたセシウムは、下の土とかきまぜられて濃度こそ低くなったものの、農地には少なからぬセシウムが含まれたまま、地中20-30センチまで汚染が広がった結果、もはや除染は事実上不可能になった。農業用水の溜池やその水源地の森林にはもっと子いいセシウムがあり、これらが流れこむリスクもある。


コメント:
福島の人々が、自立した考えと裏切りとダマシを断固許さない決意を掲げて、広く日本国民と世界の人々に「連帯」を求めてゆくことを期待しています。今のままでは、いつまで農林水産省(無責任な権力)や町村の首長に振り回されるのか!、情けない気持ちでいっぱいです。



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