安倍内閣による危険な原子力政策の再開

プルサーマル計画再稼働の独断決定、前のめりの原発輸出など

■安倍首相は、自分を、直接選挙で国民から圧倒的に支持された大統領だと思い込んでいるらしい。そうだとすると、誤解もはなはだしいが、そこまで舞い上がっているようにも見えない。多分、国民をペテンにかけてほくそ笑んでいるのだろう。そのペテン師の手品の道具が、「アベノミックス」だったようだ。だが、手品の道具を用意していただけ、前任の民主党野田首相よりましだ、ともいえる。

なぜならば、彼の前任者は、官僚のあやつり番頭、とりわけ財務省官僚の番頭だったし、国民の声など全く意に介していない人物だったからだ。政権交代を実行した「民主党政権」から、こんな人物が登場したことに驚いたものだ。野田氏の時、多くの国民が起こした「原発再稼働反対」行動、「あじさい革命」と呼ばれた反原発の行動に対して彼がとった態度を見れば、その鈍感さが知れようというものだ。この二人の政治指導者に言及しようとすると、こちらの言葉が、乱れて、どうしても品を失ってしまう。

結局、元よりあやふやな代議制民主主義の危うさが、こういう首相を誕生させたとと思うし、ここに代議制の限界が露呈してしまったといえよう。

代議制民主主義の原理主義的弁護者の小沢一郎は言う。代議員はマニフェストを掲げて国民の信を問う、
そして国民の声は選挙の投票でのみ表現され、議会の多数派がそのマニフェストを実行するべく首相を選ぶと。英国風の議会制民主主義のモデルははそうかもしれない。しかし、ここには多くの落とし穴があることは、誰もが知っていることだ。現代では選挙の開票手続きが大いに疑問だ、この開票作業という、元来100%の透明性と公正性が確保されていなければならない作業に株式会社「ムサシ」が介入している。投票前に、既成マスコミの恥知らずな「民意」の誘導がある。

また、マニフェスト(前は選挙公約などといっていた)など、かなり前からただの「空手形」になっていた。マニフェストの重要性を強調していた民主党政権ですら、鳩山政権、野田政権などはあっさりそれを反故にしてきている。安倍政権も同様であるが、この政権に固有な問題は、議院内閣制というオーソリティーの枠組みを簡単に踏みにじり、独裁的な権力行使に有頂天になっていることだ。実は、安倍政権を支持するファッショ的勢力は、彼の個々の政策など全く問題にしていない。ただ彼の独裁性に期待しているのだ。安倍政権のみでなく、自公政権が継続されるかぎり、もはや、代議制民主主義--間接民主主義--の片鱗も消し飛んだ感じだ。

ではどうすればよいか? まづ第一に、このブログで何度も書いてきたことであるが、国民が議会制民主主義は民主主義の一部に過ぎないことを自覚し、主張することだ。つまり、国民の直接的実力行動と真に地方政治が権力の内実を掌握することが、民主主義の基本であることを自覚することだ。もちろん民主主義は、効率性とは元来無縁なものなのだ。民主主義は「非効率」な制度だなどと評論家がしたり顔でよく言うが、それとは意味が違う。代議制とは平時の制度であって、民主主義の二次的制度のはずだ。

現在進行中のウクライナの内乱、クリミアでの領土分割の事態を、EU、ロシアのどちらかに偏ることなく、よくよく注視する必要があると思う。ウクライナの新政権の中核であるSVOBODAはネオナチであるとか、ロシアによるクリミアの併合は国際法を無視した帝国主義であるとか、そのようなプロパガンダに迷わされては肝心なことを見落としてしまうと思う。その肝心なこととは、民衆の民主的自決権に基づく直接行動とその激情である。日本のペテン師的政治風景とは全く異なる点を、よくよく観察すべきだ。

■横道にそれてしまった。安倍首相の原子力政策を批判的に取り上げようとすると、どうしても、上のような前置きに言及せざるを得ないのだ。ともかく、彼の国民への態度は恥知らずにしてペテン的であり、矢継ぎ早に出してくる政治行動はきわめて危険であり、民主主義のフレームを踏み外している。批判的な言論で、彼の行動を押し止めることはできそうにない。

国内に貯蔵されている膨大な量のプルトニウムをどうするか、これは当然処理しなければならない問題だ。安倍首相は、これが核兵器に転用されかねないという国際的疑念をかわすために、プルサーマル計画を軌道に乗せ、国内の原発でフル利用すること打ち上げ、批判をかわそうと考えているらしい。原発の廃止・縮小とは全く逆の方針だ。これでは、与党内部からも批判が出てくるのは当たり前で、それを意識してか、与党合意を素ドウリして、今開かれているオランダの核サミットで打ち上げるらしい。

昨日の会議の場で彼は演説し、アメリカからかつてもらった濃縮ウランとプルトニウムを返却すると述べたとのことだ。そして、日本政府は「福島第1原発事故の教訓を踏まえ、」「原子力の安全管理や核テロ対策に全力を挙げる」と、大見えを切ったようだ。東京オリンピック誘致の折に、「福島はunder control」と世界をだましたのと同じ論法だ。

多くの人が見る通り、福島原発事故は、東電原発の爆発現場も放射能疎開者の現場も、県外から見てさえ、にっちもさっちもいかない状態が続いている。時間の経過はおそろしい。この間に何も改善しなかったのではなく、悲惨さの「第二の底」が始まっているようだ。どれだけ深刻な事態になっているのか、危機はどう深まっているのかを知るために、筆者は近日中に、福島を訪問することにしている。現場を直視すれば、何か手立てが見つかるかもしれないという期待はある。

ともかく、原発事故の対応に関して、日本の行政とマスコミの罪は重い。冷静に見ることのできる外国諸国は、当然とっくにそのことに気づいている。安倍首相の「大見え」芝居は、さぞかしピエロに映っているに違いない。

安倍の「大見え芝居」ニュースを以下に二つ引用する。

安倍首相 政府・与党の了承なく「核燃サイクル推進」  
2014年3月21日 07時09分


 安倍晋三首相が二十四、二十五両日にオランダ・ハーグで開かれる第三回核安全保障サミットで、原発の再稼働を前提に、使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の推進を表明することが分かった。核燃料サイクルを「推進する」と明記した政府のエネルギー基本計画案に対しては、与党内で反対論が根強く、まだ閣議決定がされていない。政府・与党の意思決定前に、世界に向けて日本が将来も原発を維持する方針を発信することになる。

 プルトニウム核兵器の材料となるため、利用目的がはっきりしないまま大量に保有していれば、テロや核拡散を招くとして国際社会から疑念を持たれる。日本は長崎に落とされた原爆の五千発以上に相当する四十四トンものプルトニウム保有している。

 首相は核サミットで「利用目的のないプルトニウムはつくらず、保持しない」との方針を表明。安全が確認された原発は再稼働させて、核燃料サイクルによりプルトニウムを使っていく考えを示す。

 ただ、大量のプルトニウムを消費するのに何年かかるかの見通しは立っていない。再利用を名目に長年にわたって原発を動かし続けることになりかねない。

 核燃料サイクルに関しては、取り出したプルトニウムを利用するはずだった高速増殖原型炉もんじゅ福井県)はトラブル続きでほとんど動いていない。通常の原発で使用済み核燃料のプルトニウムを使うプルサーマル発電も、通常の核燃料に比べて二倍の高レベル放射性廃棄物が発生するなど問題が多い。

東京新聞-タイトルを多少変更している)


核安保、日本が主導=高濃縮ウラン米に返還−安倍首相演説
(2014/03/25-00:46)

【ハーグ時事】安倍晋三首相は24日午後(日本時間25日未明)、オランダ・ハーグで開かれた核安全保障サミット全体会合で演説した。首相は東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、原子力の安全管理や核テロ対策に全力を挙げる方針を表明。「日本には核セキュリティー強化を主導する責任がある。私自身が先頭に立って進める」と強調した。
 首相は原子力安全管理や核テロ対策の具体策として、米国から研究用に提供され、独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)」(茨城県東海村)の高速炉臨界実験装置(FCA)で使用されている高濃縮ウランと分離プルトニウムを全て米国に返還し、処分することを柱とする日米首脳の共同声明を出したと発表。「今後も核物質の最小化に取り組む」と述べた。
 高濃縮ウランなどの米国返還は、核兵器への転用が可能な核物質が犯罪者やテロリストの手に渡るのを防ごうとする米国中心の取り組みの一環。共同声明には、代替燃料を使った最先端の研究を日米が共同して進めていくことも盛り込まれた。

jiji-com


■さらに、安倍政権が問題なのは、日本製原発施設の輸出に全く前のめりになっていることだ。中国・韓国を除く世界中を飛び回っているその「積極外交」の目玉が、なんと「原発輸出」なのだ。「日本の原発は世界一安全です」と言うのがその売り文句になっている。やはり、おかしい。福島第一原発が「想定外」で未曾有の事故を起こしておきしながら、日本製原発が安全ですという神経がおかしいのだ。常識を逸脱している。

輸出相手国は、いわゆる工業後進国だけではなく、西洋諸国もはいっている。相手国の政治担当者にはいろいろな利害が絡まるので、日本の原発輸出を簡単に拒否するようなことはしない。しかし、それぞれの国民の間からは、大きな反発と抗議行動が起こっている。インターネット上の情報を探せばいくらでもその実態を探すことができる。日本の既成マスコミが一切報道しないだけだ。

輸出候補先で巻き起こっている抗議行動とその訴えは、我々の胸を強く打つ。日本人を厳しく攻撃しているのではなく、むしろ福島原発事故を招いた日本を諭すような塩梅なのだ。一度、本ブログに掲載した「ガンジー主義者ナラヤン・デサイの手紙」を再掲載する。


日本国首相 安倍晋三

日本の国民ほど、核がもたらす惨事に苦しめられてきた人々は他にありません。過去66年ほどの間に、日本の国土は3回も放射性物質による汚染を経験しました。

産業社会の利益を実現するための強い重圧を受けているにもかかわらず、日本政府がこれまでのところ、人々の声に耳を傾け、原子力発電所の大半を稼働させていないことは賞賛に値すると考えます。

インドの人々は過去60年間、原子力発電の経験を通じて教訓を学んできました。原発予定地では圧倒的多数の住民たちが、政府が継続しているプロパガンダにも負けず原発計画に反対しています。あなたの訪印前夜にインド各地で実施された抗議活動の写真を、この手紙に同封します。

わたしたちは印日の二国間関係の発展を望んでいます。しかし、その健全で持久的な発展を実現するには、人々の声に耳を傾け、人々の長期的利益を反映したものにする必要があります。原子炉を輸出し原子力プラントの整備を後押しすることは、この目的に合致しません。インドは核不拡散条約(NPT)に調印しておらず、核兵器開発に積極的に取り組んでいるのですから、なおのことそうです。短期的な経済的利益のために未来世代の幸福を犠牲にするべきではありません。

ナラヤン・デサイ
アヌムクティ・グループ

from: DiaNuke.org
http://www.dianuke.org/shinzo-abe-narayan-desai-fukushima-nuclear/


原発輸出については、包括的に考えていきたい。まず、輸出先がどれくらいあるか地図にプロットしてみた。(アメリカ大陸は除いている)

こちらも参考にしてください。
原発輸出の現状.pdf 直







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