「天皇から皇太子に宛てた手紙」

 

 

「戦争を考える月」に指定されている暑い夏の月、8月が今年も終わろうとしている。今年は、例年とはちょっと事情が違っていた。理由は、中国発のコロナウイルスが「過去最大に」蔓延し、身近にもその病に襲われた者が出たただけではなかった。過去の戦争、ここでは第二次大戦のことだが、それと身近に迫っている次の戦争が、重なり合い、関連し合いながら話題にされていたことが大きな違いなのではないか。

いま目の前に、「昭和天皇独白録」という小さな本がある。嫌いだった昭和史家・半藤一利が編纂した文庫本で、終戦直後の昭和21年3-4月、昭和天皇が数回にわたって近親者数名に、戦争中の自らの態度と戦争の分析を口述した【独白】が収録されている。上記のような理由から、今回これを再読してみた。

その中に注目に値する部分があったので、ここでそれを紹介したい。それは半藤氏の注釈の部分(p.100)なのだが、終戦直後の9月9日付で昭和天皇が皇太子(平成天皇)に宛てた手紙がそれである。そして、半藤氏は「天皇のいわば不動の太平洋戦争観が、はっきると見て取れる」と評している。

 

以下引用。

(日本の敗戦の)敗因について一言いわしてくれ」と前置きして、手紙の中でつぎのように昭和天皇は記している。

我が国人は、あまりに皇國を信じすぎて、英米をあなどったことである。

我が軍人は、精神に重きをおきすぎて科学を忘れたことである。

明治天皇の時には、山縣、大山、山本等の如き名将があったが、今度の時はあたかも第一次世界大戦独国の如く、軍人がバッコして大局を考えず、進むを知って、退くことを知らなったからです。

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