「プルサーマル計画」への「不都合な事実」が、また漏れてきた

プルサーマル計画」は、深い国家の意図を持って策定されたと考えられる。つまり、核爆弾の原料プルトニュムの調達、もちろん原子力発電の原料にも使用可能である。これは、不可触の「国策」なのだ。この国策の表向きの触れ込みは、原子力発電原料、つまりエネルギー資源の安全保障である。しかし同時に、平和憲法を持ちながら、核兵器製造「能力」を維持し続けること、そのことを国際的にも潜在的にアピールする役割を持っている。

この国策は、多くの政策が過度の対米従属路線に沿ったものであるにもかかわらず、対米従属とはずれていると考えられる。事実、米国政府は、日本に対して、この計画に基づく過度のプルトニュム保有に常に懸念を表明し、監視を怠っていない。つまり、これは日本独自の国益を追求する唯一の「国策」かも知れず、そのことが、保守派の政治家を勇気付けさせているのかもしれない。しかし、いかなる視点から見ても危険すぎるプルトニュムを巡って、独自の国益を追求しようなどとは、悪夢だし常軌を逸している。

日本は、核爆発・放射能被害が多すぎる。何故だろうか? これを運命論で片付けるわけにはいかない。原因は複合的なような気がするが、よくは解明されていない。ところが確実なことは、これほどの核被害にあいながらも、権力・政治の世界はまったくこれらの被害から学んでいないということである。政治というのは、もとより過去を模倣することはできても、過去から学び新たな地平を切り開くことはできないのかもしれない、特に日本では。

民主主義を「主権在民」といい直すとすれば、この主権在民と政治の現実は余りにもかけ離れている。「民主的」ということと「政治的」ということは互いに相容れないのではないかという気さえする。「民主的政治」などというものは、言葉の本来の意味で、有りうるのだろうか?

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このたび「プルサーマル計画」にとって不都合な事実が、また漏れてきた。漏れ出したのは、正力松太郎が委員長(1956年)をやっていた頃からの古い歴史を持つ原子力委員会(現委員長近藤駿介)からである。同原子力委員会は、近年、内閣府に吸収され、その秘密性をますます強めてきている。原子力推進派だけで、常に秘密会議を繰り返してきている。そういう秘密会議の中身が暴露されたのだ。報道したのは、「東京新聞」で、その記事が今日の一面トップ記事を飾った。


東京新聞

「ウラン節約」ウソだった 再処理「原発維持のため」
2012年9月5日 朝刊

 原子力委員会原発推進側を集め昨年十一月に開いた秘密勉強会の場で、電力各社でつくる電気事業連合会電事連)の幹部が、使用済み核燃料の再処理事業は、原発に使用済み核燃料がたまって稼働できなくなるのを防ぐため、と明言していた。国も電力会社も、再処理はウラン資源を節約し、エネルギー面の安全保障のためだと再三強調してきたが、虚偽の説明だったことになる。
 発言者は電事連原子力部長。内閣府の検証チームが集めた議事資料などによると、昨年十一月二十四日の会合で、原子力委の鈴木達治郎委員長代理が「電力会社としては、コストが高くても再処理する理由があるのか。とりあえずは(使用済み核燃料を)処理できるということがメリットか」と部長に質問した。
 これに対し、部長は「その通り」と即答し、「再処理路線でなければ、使用済み核燃料の受け入れ先がなくなり、原発が止まってしまうことになる」と述べた。
 本紙の調査で、国内約六割の原発では、稼働させれば数年内に使用済み核燃料プールが満杯になる。核燃料が交換できなくなり、それ以上は稼働できず、行き詰まった状態になると判明している。
 鈴木氏の質問は、電力各社にとって再処理を続けるメリットは、プールにたまった使用済み核燃料を減らし、原発を維持することかどうかをただす趣旨。部長の答えは、まさに電力会社の本音を語ったものだ。
 ただし、日本の原子力政策の建前は、再処理で出たプルトニウムを使い、混合酸化物燃料(MOX燃料)にしてプルサーマル発電で再利用。それが「資源小国の日本にとってウラン資源の節約につながる」ということだ。その建前で十兆円もの巨費を投じてきたが、再利用の輪は完成しておらず、MOX燃料の利用計画も立てられなくなっている。
 政府・与党は近く、将来の原発比率をどうするか結論を出す見通しだが、再処理を含め原発を維持しようとする動きは根強い。政府からは、原発ゼロにした場合、光熱費がアップするなど否定的な側面だけを宣伝する動きも強まっている。
 だが、これまでの再処理の建前はうそで、原発を運転し続けるための方便ということがはっきりしたことで、再処理事業の存続意義はますます揺らぐことになりそうだ。
 電事連は「(秘密勉強会の)出席者や発言者の確認をしていない」として、検証チームへの資料提出を拒否している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012090502000123.html




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